食料安全保障を支える農地は、重要な国家資源です。しかし近年、人口増加と都市化の波にあおられ、宅地や工場用地へと転用される傾向にあります。
無秩序な農地転用が進めば、国内の食料供給に支障をきたすおそれがあるため、日本では「農地法」により農地の転用を規制する仕組みを設けています。この制度は、無尽蔵ではない農地を適正に保全し、食料生産基盤を守ることを目的としています。これにより、農地を他の用途に転用する際は、都道府県知事の許可を得ることが原則として義務付けられているのです。
こちらでは、農地転用や処分をお考えの方に向けて、負動産(売却が難しい土地・建物)処分に関するご相談に対応する株式会社ゴダイリキが「農地転用の手続き」や「農地を放置するデメリット」などについてご紹介します。
農地転用の許可申請はなぜ必要?
◇農地転用の許可申請が必要な理由
農地は食料生産の基盤として重要な国家資源です。しかし、急速な人口増加と都市化の進行により、農地は宅地や工場用地などに転用されがちです。そのため、農地転用を無秩序に行うと食料供給が困難になるおそれがあります。
このような事態を避けるため、日本では「農地法」により農地の転用を規制しています。つまり、農地を宅地や工場用地などに転用する際は、原則として都道府県知事の許可が必要となるのです。
このように、農地転用に許可制が設けられているのは、国家的な観点から優良な農地を確保し、無秩序な転用を抑制することが目的なのです。

◇農地転用の種類と手続きの違い
農地の転用に際しては、転用の種類によって必要な手続きが異なり、転用の目的に応じた許可申請が求められます。
・農地法3条(農地の売買・賃貸借)
農地を売買または賃借する場合(農地転用を除く)、譲受人と譲渡人は原則として農業委員会に申請し、許可を受ける必要があります。許可を受けずに行った売買や賃借は無効となります。
<個人が農地の権利を取得する場合の要件>
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自らが耕作や農作業に恒常的に従事すること
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その世帯員が農作業を常時行うこと
<法人が農地の権利を取得する場合の要件>
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農地所有適格法人の要件を満たすこと
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事業計画を適切に策定することなど
詳しくは、参考情報の農林水産省Webサイトをご覧ください。
出典:農林水産省「農地の売買・貸借・相続に関する制度について
・農地法4条(自己利用のための転用)
農地法第4条に基づく農地転用許可は、農家自身が自己の農地を自己利用目的で転用する際に必要となります。
例えば次のようなケースが該当します。
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農家住宅の新築・増改築
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農機具や家畜の飼育施設の新設
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農業用の駐車場や資材置き場の設置
このような自己利用目的の農地転用では、「許可基準」を満たせば原則として許可が下りやすくなっています。ただし、第4条の許可申請の際には細かい審査基準があり、申請書類の不備があると却下される可能性もあります。
農地の転用を検討する際は、事前に農業委員会や市町村の窓口に相談し、適切な手続きを行う必要があります。
・農地法5条(相続農地の転用)
相続した農地を転用する場合は、農地法5条の許可が必要です。
相続人が相続農地を転用したい場合は、許可申請書に以下の書類を添付して提出する必要があります。
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相続関係説明書
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地籍図
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設計図書
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事業計画書
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資金計画書など
相続により取得した農地は、農地法3条の許可なしで所有できますが、転用する際は5条の許可が別途必要になります。また、相続した農地を農地のまま所有する場合でも、第三者に売却・賃貸する際は農地法3条の許可が必要になります。
農地転用の流れ
農地の転用手続きには、その農地が市街化区域内か市街化調整区域内かによって異なる流れがあります。市街化区域内と市街化調整区域内それぞれの場合について、手続きの概要をまとめました。
◇市街化区域内の場合
農地を転用する際の手続きは、その農地がある自治体の農業委員会に対して行います。郵送での申請は受け付けられないため、農業委員会の窓口に出向いて手続きを進める必要があります。農地法第4条の場合は農地所有者が、第5条の場合は所有者と転用者の双方が共同で申請を行います。代理人(行政書士など)を通じた申請も可能です。

申請の時期は特に決まっていないため、いつでも申請できます。申請から概ね1週間程度で、農業委員会により書類審査が行われます。問題がなければ「受理通知書」が交付されますが、不備があれば「不受理通知」が出される可能性があります。自治体によっては、週ごとに締切日が設定されている場合もあり、その際は審査に1週間以上かかる場合があります。
「受理通知書」の受け取りは窓口で行いますが、委任状があれば申請者以外でも代理受領できます。代理受領であれば、行政書士に限らず代理人を立てることができます。
◇市街化調整区域内の場合
市街化調整区域の農地を転用するには、農地転用許可を受ける必要があります。まず該当農地の所在する自治体の農業委員会を訪れ、その農地の種別を確認します。地図や登記情報を持参すると確認がスムーズです。
もし原則不許可となる農地の場合は、転用目的を説明し、許可される可能性を確認しましょう。転用が可能なようであれば、必要書類の案内を受けます。また、その農地が土地改良区域内にあるかどうかも確認が必要で、農林課や農政課の窓口でも問い合わせを行います。
農業委員会での確認後、書類の準備に入ります。申請書や配置図は自身で作成し、ハウスメーカーからの資料、法務局の公図なども揃える必要があります。分筆を伴う場合は、分筆登記完了後でないと申請できませんので、土地家屋調査士に登記時期を確認しましょう。書類がそろったら、農業委員会で一度点検してもらうと安心です。
すべての書類が整ったら農業委員会へ提出し、申請します。不備があると許可が遅れる可能性があるため、入念なチェックが重要です。また、申請日は毎月決められているため、事前に確認し期限を守る必要があります。
農地を放置するデメリットと農地処分の選択肢
農地を放置し耕作放棄地としてしまうことには、多くのデメリットを伴います。こちらでは、耕作放棄地に発生するデメリットをご紹介します。
◇農地を放置するデメリット
農地にかかる固定資産税は、評価額(売買価格の55%)か前年度の課税標準額(前年度売買価格の55%×負担調整率)のいずれか低い金額に税率を乗じて算出されます。
しかし、使用していない農地の場合、売買価格の55%控除が受けられなくなります。その結果、課税標準額が約1.8倍になり、固定資産税の負担が大きく増えてしまいます。将来的にも使用予定がない農地を長期間抱え続けると、高額な固定資産税の支払いが必要になり、税制面のデメリットが大きくなります。
・草刈りなどの維持管理費用がかかる
耕作放棄地でも周辺への迷惑とならぬよう、年間10万円程度の草刈り代がかかります。
・害虫や野生動物が寄り付く
耕作を放棄すると雑草が生い茂り、それに伴い害虫も増えます。さらに虫を食べるシカやイノシシなど野生動物が集まってくる可能性もあります。
・災害の危険性が高まる
耕作地の土は水分を保つ性質があり、災害の影響を低減しますが、耕作放棄地ではその機能が失われます。
・不法投棄の標的になる
人の目が届かなくなった耕作放棄地は、廃棄物の不法投棄を招くおそれがあります。
このように、耕作放棄地を放置すると様々な問題が生じるリスクがあります。
◇農地処分の選択肢
農地転用の許可が得られない場合、農地は耕作放棄地となり、前述のようなリスクが生まれるおそれがあります。そのため、売却などの選択肢を検討する必要があります。
・農地の売却
農地の売却は居住用地より難しい側面があります。その理由は、農地法により売却先が農業従事者に限定されるなど、多くの制約が課されているためです。
一般の居住用地と同様に農地を売りに出しても、買手がなかなか見つからず長期に渡って売れ残ってしまうリスクがあります。農地は売却が難しい性質を持つ不動産だからです。
売れ残るリスクを負わず、農地をスムーズに手放したいのであれば、農地のような売却難易度の高い土地の取り扱いに長けた不動産会社に相談してみるのも一つの方法でしょう。
・農地中間管理機構への利用集積
農地中間管理機構に農地を貸し出す方法もあります。管理機構は、借り受けた農地を担い手農家に再度貸し出します。これにより、農地の有効活用が図れます。
農地を少しでも高く売りたいときに知っておきたいコツ
農地を少しでも高く売るためのコツの中でも、すぐに取り組める方法が3つあります。
◇1.5年以上所有してから処分
税金が安くなります。5年以上所有している場合は、譲渡所得税率が低くなるため、手元に残るお金が多くなります。
<譲渡所得税の計算式>
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取得後5年を超えての売却:税額=譲渡所得金額×(所得税15%+住民税5%)
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取得後5年以内の売却:税額=譲渡所得金額×(所得税30%+住民税9%)
◇2.農地をきれいにする
雑草を刈ったり、ゴミを捨てたりして、土地をきれいにすることで、見栄えがよくなり、買いたいという人が増える可能性があります。
◇3.専門的なノウハウを持つ業者に相談する
不動産業者の中には、農地売買に強い専門家もいます。農地の相場や手続きについて手厚いサポートが可能なため、安心して売却を進めることができます。
農地を高く売るためには、税金対策、土地の整備、専門家の活用という3つのポイントが重要です。これらのことを踏まえて、あなたにとって最適な売却方法を考えてみましょう。
農地転用手続きを専門家に相談するメリット
農地転用は、専門知識や経験がないと、複雑で時間のかかる手続きとなります。そこで、農地転用に関する豊富な知識と経験を持つ専門家に相談することをおすすめします。専門家のサポートを受けることで、農地処分の悩みを解消し、スムーズに事業を進めることが可能になります。専門家に依頼することで得られる主なメリットは、以下のとおりです。
◇本業に集中できる
農地転用は、事業者にとって最終目的ではありません。専門家に依頼することで、本来の事業に集中できます。
◇時間の短縮
専門家は、農地転用の手続きに精通しており、スムーズかつ迅速に手続きを進めることができます。これにより、事業開始までの時間を短縮できます。
◇見通しが立てやすい
経験豊富な専門家は、農地転用に関連する様々な手続きを把握しています。全体的な所要時間の見通しを立てやすいため、より具体的な事業計画ができます。
◇手続きの見落としを防止
農地転用以外にも、申請や届出など必要な手続きがある場合があります。専門家に依頼することで、そういった手続きの見落としを防げます。
◇役所とのやり取りを省略
専門家が役所とのやり取りを代行することで、事業者様ご自身が役所に足を運ぶ必要がなくなります。平日の時間を取られずに済むため、業務への影響を最小限に抑えられます。
◇スムーズな事業承継が可能
農地を相続された場合、スムーズな事業承継には、農地の名義変更などの手続きが必要となります。専門家は、円滑な事業承継に向けて、必要なサポートを提供します。
◇最新の情報に基づいたアドバイス
農地転用に関する法令や制度は、頻繁に変更されています。専門家は、常に最新の情報に基づいたアドバイスを提供します。
◇トラブルを未然に防ぐ
農地転用には、様々な注意点やリスクがあります。専門家は、豊富な経験に基づいて、トラブルを未然に防ぐためのアドバイスを提供します。
農地転用に関する一般的な注意点
農地を転用する際は、一般的に以下の点に注意が必要です。
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所有する農地の地域区分(市街化区域か市街化調整区域か)
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転用する目的(自分の住宅用地か、他人への売却・賃貸か)
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農地転用の手続き方法(許可申請か届出のみか)
市街化区域内の農地は、比較的手続きが簡単な届出のみで転用可能な場合も多いのに対し、 市街化調整区域内の農地は、厳しい審査を経た上で許可を得る必要があります。
また、自分の住宅用地として転用する場合と、他人への売却や賃貸を目的とする場合とで、手続き方法が異なります。
このように、農地の転用には様々な制限があるため、事前に専門家に相談し、適切な手続きを行うことが重要です。
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